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2016年2月 1日 (月)

広谷喜十郎の歴史散歩 222

      立春の卵

 今年の1月前半は、暖冬でどうなっているのだろうか。気になっていた。
 それが突然、厳寒の到来。日本列島全体に大雪が降り、雪とは無縁と思われていた沖縄にまで雪が降った。
 2月に入った。立春が近い。「立春の日には卵が立つ」という言葉は、もう「死語」になってしまったが、かつては何かと話題になった。新聞紙上でも取り上げられていたことを思い出す。
 この問題に、真っ正面から取り上げたのは、世界に先駆け科学実験をおこない「人工雪」の生成を成功させた中谷宇吉郎である。
 中谷氏の「立春の卵」というエッセイが『雪は天からの手紙』(岩波少年文庫)に16頁にわたり収録されている。
 このエッセイ集を編集した池内了氏は、〈かつて何の理由もなく「立春の日にだけに卵を立てることができる」ということが信じられていました。それを疑って、どんな日でも卵を立てることができることを示し、どのような条件があれば卵が立つかを考察した(略)根拠もなく、みんなそう言っているから正しいのだろうと信じ込むことの危なさについて、彼は警告を発しているのです〉と述べている。
 私もこの中谷氏の文章を読みながら、科学する心の大切さを改めて再認識した。
 中谷氏は、恩師・寺田寅彦の「茶碗の湯」というエッセイを紹介している。〈全部で、印刷にして6ページくらいの短いものである。しかし、その中には、先生が一杯の熱い湯のはいった茶碗を手にして、物理学の全体を説き明かして行かれる姿が出ていた(略)昔の仙人は一つの壷の中に森羅万象を見たというが、一杯の茶碗の湯の中にも全宇宙の法則があるということもできよう。ただ、「茶碗の湯」の中に全物理学の姿を見ることができるような人はなかなかいない〉と、述べている。
 中谷宇吉郎氏は、このような寺田寅彦の教えを受けて世界的な学者になったわけである。
 その他何人かの有名な科学者の伝記を読んでみると、この「茶碗の湯」を少年時代に読んで啓発されてというから、今の少年たちにも読むことを勧めたい。
                          (私も卵を立ててみました)

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